ぼぶろぐ2

音楽、本、家族、たまに筋肉。

日乗

 

 出張で北関東へ、片道3時間の旅。非効率だが移動の湘南新宿ライン車内は貴重な読書時間になる。今日はもともと早く帰宅する予定だったけれど、エライ人が同じ電車に乗る気配を察知、息をひそめてやり過ごした。大切な一人の時間を奪われるわけにはいかない。次の電車が来るまでの空き時間、駅建屋内の本屋で物色。そこで西村賢太著「一私小説書きの日常」を発見、購入した。

 ただの日記、それも、誰と会った何を食ったという類の淡々としたもので、ドラマチックな展開もなければ興味をそそられる物語もない。にも関わらず、なぜか100分間休まず読み耽った。ほとんど読み終わった。わかったことは、高田文夫と宝焼酎が好きなこと、寝る前に良く食べること、石原慎太郎を尊敬していること、そして日々いろいろな人と会っているということ。著者はかつての自身の境遇と比べて現在の日々に感謝をしている旨が伝わってくる。なんていうのかな、この人はすごく自由だ。少なくとも精神的にはものすごく自由に見える。自由という言葉の定義にもよるだろうけど。きっと物理的・経済的には不自由だったであろう時期から、ずっと自由であり続けようとしたんだと思う。それも、何かに抗って自由を獲得しよう、というのではなくて、ただ、その時からずっと自由だったのだ。それはあくまで僕の目から見てであって、彼自身が自由だと感じていたかどうかはわからない、おそらく違ったのだろう。でも、誰も読まないかも知れない、小説を書き続けるという行為そのものが、すごく自由に感じられる、少なくとも僕には。書けば僕だって自由になれる。