ぼぶろぐ2

音楽、本、家族、たまに筋肉。

今のところはフィクション

きょうはエイプリル・フールだけど、これからいうことは嘘じゃないんだぜ。あした、会社をやめる。モノカキになるんだ。さようなら。まず、ホノルルへ。ついでニューヨークからフロリダへ。そこで自由への片道切符をうけとることになっている。さようなら。会ってからいきたかったけれど、もうおそい。またいつか、どこかで会おう。それまで元気で。さようなら。きょうの横浜は猛烈に寒くて、ひどく頭が痛い。冬と風邪が、そろって一度に逆襲してきたみたいだ。けれどもあしたはなつかしい心のふるさとホノルルだ。うれしさがこみあげてきて、ぞくぞくする。さようなら。そこからさきは、たぶんずっと夏がつづくのさ。きょう、『コロンブスの犬』を読んだ。舞台はブラジル、なんだかすごく素晴らしい作品だった。下手な旅人、ビタミナ・セをすすめる部屋係のおばさん、きわめて詩的な日本語。()の多用。()の中こそが<書く旅人>にとっては重要な伴侶だ。()がたくさん出てくるエセーはぜんぶ好きだ。いまのところぼくにとっては、それがエセーについての唯一の判定基準だ。ジル・ラプージュの「赤道地帯」についても書いてあった。「1988年の北半球のなつ、ぼくはぼくの心の首都ホノルルの小さなアパートで『赤道地帯』の翻訳を続けていた。」この一文だけで、それがめちゃくちゃにおもしろいってことがわかる。でももうおそい。読むことができない。こんどは、いつ、どこで、その本に会えるかわからない。フロリダでも絶版になったその本を手に入れられるってこと、誰か保証してくれるだろうか。さようなら。機会があったらぜひ読んでくれ。それを読んだら、ぼくのぶんまで、ブラジルに思いを馳せてくれ。

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コロンブスの犬 (ラテンアメリカ・シリーズ―コレクション・ブラジル)

コロンブスの犬 (ラテンアメリカ・シリーズ―コレクション・ブラジル)

 

 

2014年に読んだ本の中で一番(今まで読んだすべての本の中でも3本の指に入る)衝撃を受けた本、管啓次郎の『コロンブスの犬』。こんなに「文章そのもの」を味わえる本を初めて読んだ。こんな風に文章が書けたらステキだろうな。たとえその内容がどんなものであってもね。実際、一番衝撃を受けたわりに、どんな内容が書かれていたかはあまり覚えていないんだ。はじめからおわりまで、ただただ読む愉しみに満ちていた。そしてもう一度じっくり味わうために、冒頭のパラグラフのパロディを書いてみた。今のところはフィクション。でもいつかは本当のことになる。何年後のエイプリル・フールになるかはわからないけれど(それはもしかしたら今年かも知れないし、あるいはエイプリルフールとは限らないけれど)。